052 京哉と京

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智は『シノ』と呼ぶし、あいつらは『いっちゃん』だと!!? 「あーえっと…‥勝手にそう呼んでくるんだよ、いっちゃん…なんてキャラじゃねぇのはわかってる」 驚いて固まる俺に、いつきがそう説明した。 なんて可愛いらしいあだ名だ。 ……って、それよりも! 「俺に会いにくんのか?」 変なあだ名のことで、大切なことを忘れそうになった。 ───俺に会うだと? 俺のことくらい、鷹岡学園の生徒なら誰だって知ってるだろ? 自分で言うのもなんだが、自分は広報部部長だし、生徒会№3。 それなりに知名度はあるはずだ。 ──つまり、 「会う」=「会って話をする」 =…‥‥ あまり気がむかない話だな。 俺は、客観的に-いや、いつきを慕う側から見てみれば、ものすごく非難される立場にいる。 達也を忘れる為に、いつきの好意を利用し、対した愛情も向けないまま、いつきの『恋人』として居座っているのだから。 いつきはそれでいいと言う。 けれど、いつき側の外野からしてみれば、無理にでも止めさせるべき関係で。 それを言えずに流されて、いつの間にかいつきを好きになることさえ臆病になっている俺は、……最低だ。
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