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泣きそうになるのを堪えて、
ここから立ち去ろうとベンチから立ち上がった。
「じゃあ、もう帰るね」
「あぁ、気をつけて」
泣きたい気持ちを抑えて、
一緒に居たい気持ちも我慢して、
私は彼に背を向けた。
「…またね」
いつもと同じセリフ。毎日決まった別れ際、
どれだけ彼に呼び止められたいと思ったか、
ずっと泣いてても隣に居たいとか、
彼には伝わらないと思う。
「うん、また明日!」
「……うん」
背中越しに聞こえる彼の声を、
私は後ろ髪を引っ張られる思いで聞く。
「じゃ…っ…ね」
振り返ってわざと笑んでみる。
平気だよ、大丈夫っていう意思表示みたいに。
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