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「ほら、その美形顔に免じて警察は呼ばないでいてあげるから…」
その先は言わず、私は人差し指で玄関を指差した。
真っ直ぐ行けば玄関だからそこから出ていけ、と全身――主に目で訴えてみるが美形はそれを華麗にスルー。
この美形…大事にしない様にと警察呼ばないであげてるのになんて態度だ。警察沙汰や裁判沙汰にでもなりたいのか、この美形不審兎め。だったらお望み通りにしてやろうじゃないか。
本気で警察呼ぼうとして携帯を取り出す。が、警察の番号をダイヤルしてる途中で手を取られて携帯を投げられた。
「……え…?」
何、何、何?
ひょっとして逆上させちゃった?でもあれはかなり大人の対応だったよね?
「失礼、生憎時間がないもので」
そしてそいつは乱暴に私の腕を掴むと、洗面台の前へと移動する。
ま、まさか水張ってそこに私の顔を突っ込むつもりじゃ…?
「ちょ、離してよ!」
掴まれてる腕をブンブン振ってみるがビクともしない。くそう、どうやったって肉体的には女性は男性に劣るのか。
「離してって言ってんでしょ!?いつまでもこのままってんなら、いくら美形だからって容赦しないんだから!」
とは言ってみるが大多数がそうであるように、私も美形には寛大なんだろうな…。
事実、私はちょっと…本当にちょっとだけ、この美形にときめいていたりしてる。そんな愉快な状況じゃないってのに呑気なもんだ、と自分の平和ボケぶりに呆れるわ。
「……時間が押してますね。
さぁて…さっさと参りますよ、アリス」
「は?」
時間?
参る?
どこへ?
そしてアリスって誰?
そう問おうと口を開いた矢先、世界が大きく回転した。
さあ、狂った物語の始まりだ!
(聞こえたんだ。貴女の泣き声が)
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