怖いおとうさん

2/4
前へ
/27ページ
次へ
-押し入れが“小夜子専用ベッド”になった最初の夜 寝室でお母さんと一緒に寝る弟を尻目に、私は初めての自分のベッドに得意げに上がった。 天井にはお母さんが付けてくれた布の無数の星が暗闇に浮かぶ。 枕元には小さなライト。 おじいちゃんお手製の柵で独立したスペース。 私は初めて自分の部屋を貰ったような喜びでいっぱいだった。 「おやすみなさぁい🎵」 柵の上から身を乗り出して、下にいるお母さんに挨拶した。 弟が眠りに付いたのを確認すると、お母さんは起き上がってベッドに来て、私に布団をかけ直すと、優しく 「大丈夫?ちゃんと寝れるの?」 と、声を掛けた。 「大丈夫だよ。」 そう答える私にさらに 「ほんと?寂しくなったら、下りて来て寝ればいいからね。おやすみ。」 と言った。 お母さんは凄く怖がりで寂しがり屋な私を、弟のこと以上に心配しているみたいだった。 この頃の私は、霊感があったのか、夜になると金縛りにあったり、何かを見たり感じたりしてはよく泣いていて、怖くて毎日なかなか寝付けなかった。 この頃はお父さんは自営で居酒屋をしていて、お母さんも毎日手伝っていたので、いつもお父さんとお母さんは弟を保育園に預けると、昼過ぎから仕入れに出掛け、夕方には弟を保育園に迎えに行き、お店に行って仕込みをして、営業開始。 閉店は12時近かった。 そのため私は、朝は家から登校して、帰りはお店に帰るというように、登下校違う班で通学していた。 お店の奥には10畳ほどの和室があって、私と弟はそこにあるテレビゲームで遊んだり、お店で飼ってた犬と遊んだりしながら夕方まで過ごして、夕方になるとお母さんと一緒に家に帰り、ご飯とお風呂を済ませる。 そして私と弟を寝かせると、お母さんは片付けのために再びお店に行き、12時過ぎにお父さんと一緒に帰って来る生活だった。 週末以外はほとんどお父さんがいない母子家庭のような生活。 怖いお父さんがいないそんな生活が、私には幸せだった。 お父さんが休みの週末になるとおじいちゃん家に泊まりに行くのも、 怖いお父さんから離れたい気持ちからだったのかも知れない。 初めてのベッドに嬉しい半面、少し不安だった私は、お母さんの優しい言葉に安心して眠りに付いた…💤
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加