出生の真実

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出生の真実

部屋に戻って、さっそく母子手帳を見てみることにした。 父親と母親の名前が書いてあるページ…。 「これは…。誰?」 父親の名前の欄に"林君夫" おとうさんは "青山忠行"なのに…。 私は、母子手帳と一緒にお母さんから渡された日記を見た。 "8月7日" さよこ誕生 さよこ、うまれてきてくれてありがとう。 ママはほんとにうれしいよ。よくがんばったね。 お母さんの丸くてかわいい字。 ほとんど毎日、私に宛てた手紙のような話し言葉で書かれていた。 私はお母さんの愛情に胸が熱くなった。 だけど、内容はいつも "ママ"のことばかりで、"パパ"のことが書いてなかった…。 そして、私が4歳になる年に書かれた日記。 "さよこ、あたらしいパパとの生活がはじまったね。こんどのパパは、とてもこわいけど、ほんとはやさしい、いいパパなんだよ。これからは3人で頑張って幸せになろうね" …お父さんは、本当のお父さんじゃなかったんだ。 でも隆は、お父さんの本当の子供。 そっか、お父さんは私が本当の子供じゃないから邪魔だったんだ…。 日記と母子手帳を見て真実を知ってしまった私は、悲しくて、寂しくて涙が止まらなかった。 いつもお父さんに陰湿な嫌がらせを受けて、"愛されていない"ことに気付いてはいたけど、どこかでお父さんを信じたい気持ちもあった。 こんな風に、 "愛されない理由" を知って、 "愛されていない証拠" で裏付けされて、 ほんとにショックだった…。 「小夜子…。」 ふと振り返ると、お母さんが立っていた。 「……。」 私は涙で声が出なかった。
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