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  「ふう……」 夜。先に入浴を済ませた私は寝間着姿でベッドの縁に腰掛けて、彼がお風呂から出てくるのを待っていた。 遠くにシャワーの音を聞きながら脳裏に浮かべるのは、彼と見知らぬ女性の姿。 そんなもの思い浮かべたくはないのに、嫌でも浮かんでしまう。彼女に飛び切りの笑顔をみせる彼、が。 そのイメージを振り払うように勢い良く後ろに倒れて、上体をベッドに沈めた。 「どうすれば、手に入れられるのかしら」 「なにが?」 突然近くから聞こえてきた声に思わず小さく肩が跳ねた。 いつの間に出て来ていたのだろう。独り言のはずだったのに。 のろのろと身体を起こして、目の前の彼を見上げる。 咄嗟には嘘が浮かばなかったのか、それとも嘘を吐く気がなかったのか。自分でも良くわからなかった。 気付いたら、言葉が口をついていて。 「君が欲しいの」 「……は?何言って、」 「私は、君を手に入れたいの」 今更口を閉ざしたところでもう遅い。それならばいっそ、最後まで告げてしまえば良い。 たとえそれが、彼を困らせる結果になろうとも。 「今夜だけでも良いから、君の彼女にしてくれませんか」 「……不毛な恋だよ」 「それでも私は、君が好きだから」 私の言葉を冗談だと受け取ったのかもしれない。最初は困ったように苦笑していた彼。 それでも少しずつ、冗談では無いということを感じ取ったのだろう。どこまでも本気であると悟ったのだろう。 表情が次第に、真剣になっていく。 「──……本当に、今夜だけでいいんだな?」 「……はい」 長い長い沈黙のあと、小さく紡がれた言葉。酷く悩ましげな表情を浮かべる彼に、心が罪悪感で僅かに痛んだ。 けれど、もうこの想いは誰にも止められない。 そっと肩に添えられた手が私の身体をベッドへと押し倒していくのを、私はただ静かに受け入れた。  
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