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  「よ、頑張ってるか?」 「ええ、少なくとも誰かさんよりは」 時は過ぎて、ある晴れた日の午後。いつも通り私の邪魔をしに来た彼に、草刈りをしていた私は一旦仕事の手を止める。 そう、それはどこまでもいつも通り。 あの日の夜の私たちは確かにただの幼馴染みではなくて、男と女だった。けれどもそれは、あくまであの日あの時限りの関係でしか無くて。 まるで何ごともなかったかのように、私たちは以前となんら変わりのない生活に戻っていた。 「失礼な奴だな。俺は誰かさんと違って仕事が早いだけだ」 「へえ。どの口がそんなこと言うのかな」 「じ、冗談。だからその鎌を持ち上げるのは止めよう。な?」 あれが本当に一夜の夢であったとしても、構わない。女はその夢を永久にする方法を持っているから。 そっと、腹部に左手を添える。 「実りの秋まで、あと少し」 そして、私の夢も永久へと変わるのだ。思わず口許が弛む。 だってそうでしょう?夏が過ぎれば、私の想いも形になるのだから。 眠れない夜は、夢を見るようになった。 嬉しそうに笑い合う彼と、私。その視線の先には、小さな子供がいて。 幸せな、家族の形。 決して裕福ではないけれど、私の果樹園……否、私たちの果樹園で育てた林檎を売って生活をしている。時には私も子供と一緒に彼の手伝いをしたりして、仕事中でも幸せな空気が流れていた。  
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