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そのまま地下駐車場に向かう父に手を振り、フロントの前を通り抜ける。
もうすぐ出入口の自動ドアにさしかかろうとする所で、僕は誰かに腕を掴まれた。
「高校生が援助交際とは、感心できないな」
耳に心地よいバリトン。
だけど、告げられた内容は最悪だった。
「そんな事するわけないでしょ。腕を放してよ」
掴まれた手を離そうと、男の方を振り返った僕は、思わず息を飲んでしまった。
180㎝をゆうに越えている長身に、見るからに高級そうなスーツ。
そして何よりも、男の僕でさえ目を奪われてしまう美貌は、男らしく精悍な顔だ。
「だが、エレベーターのところで、金を受け取っていたよな」
自分でもそう思ったぐらいだ。
あの場面を目撃したこの男が、そう勘違いしたとしても、仕方がないかもしれない。
「もしそうだったとしても、貴方には関係のない事でしょ?」
弁解するのも面倒だし、事実を話したとしても、この男が信用するかどうかも分からない。
仮に警察を呼ばれたとしても、問題にはならない。
恥をかくのはこの男だけ。
「相沢の次期後継者が、援助交際をしているとなると、マスコミが喜んで取り上げてくれるぞ」
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