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「貴方は僕の名前を知っているみたいだけど、僕は貴方の名前を知らない。そんな状態で、貴方に敬意を払えるわけないでしょ」 しかも、脅迫までした男なのだ。 そう簡単に信用できるはずがない。 「流石に、あの爺が後継者として認めただけの事はあるな…」 感心しているのか、バカにしているのか、判断に迷う。 「俺の名前は、一条寺暁だ。この名前に聞き覚えぐらいはあるだろう?」 どこまで人をバカにすれば、この男は気が済むのか? 一条寺といえば、相沢と肩を並べるほどの資産を持つ、巨大グループの一つ。 今から三年前に代替わりし、当時まだ大学に入ったばかりの息子が後を継いで総帥になったという噂を聞いた事がある。 どうやら、年齢や身につけるモノ、雰囲気からしてこの男が一条寺グループの総帥で間違いないみたい。 だから、父が無条件で信用したんだね。 相手の身元が分かったからといって、この男が僕に近づく意図が分からない。 この男が、何の意図もなく、僕を送り届けるようには見えない。 しかも、僕の立場を理解しているのだ。 疑いたくもなる。 「僕を送って、貴方に何のメリットがあるんですか?」 「少なくとも、相沢の次期会長とは顔見知りになれるだろう?」
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