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その証拠に、全く残念がっているように聞こえない。
「そう言うお前はどうなんだ?」
まさか、そっくり同じ質問が返ってくるなんて…。
だけど、隠すような事でもないし。
「僕も貴方と同じだよ。正確に言うと、男子校だから相手が見つからないだけなんだけどね」
男に言い寄ってこられても、困るだけ。
確かに、男子校だから同性と付き合っている友人もいる。
偏見はないけれど、自分に置き換えるとやはり、拒絶してしまう。
なのに何故、この男にキスされて、僕は受け入れていたんだろう?
これ以上考えれば、泥沼に陥りそうだから、僕は思考回路を遮断した。
「何処の高校に通っているんだ?」
さっきよりもトーンの低い声。
「桜華だよ」
「ふーん」
何故か、機嫌が悪くなったような気がする。
僕は何か、この男を怒らせるような発言をしたんだろうか?
考えてみるけれど、思い当たる節はない。
お祖父様もそうだけど、人の上に立つ人は、妙に気難しい人が多いのかな?
窓の外を眺め、後ろに流れる光をぼんやりと見つめる。
そして、僕は重要な事に気がついた。
「道が違うよ」
僕を乗せた車は、マンションとは逆方向に向かっている。
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