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「本当に悠貴は可愛いね」
ホテルのレストランで食事をしながら、目の前に座る男が僕の容姿を褒める。
「あのね、男に可愛いはないでしょう」
無駄な事だと知っていながら、一応反抗はしてみる。
「そうかな?パパは悠貴が可愛くて仕方がないんだけどなぁ~」
歪んでいる…。
もうすぐ高校2年になろうとする青少年、しかも実の息子を捕まえて、可愛いはないでしょ…。
「それに、仕事が忙しくて、中々悠貴に会えないんだよ。こうやって顔を見るのだって、パパは久しぶりだっていうのに」
確かに…。
毎日電話で話をしていても、こうして一緒に食事をするのは2ヶ月ぶり。
「でも、仕事が忙しいんでしょう?今日だって無理したんじゃないの?」
チラチラと腕時計を見ているのは、きっと仕事が気になるからだろう。
「パパが悠貴に会いたかったの。だから、子供が気にする必要はないんだよ」
そう言われて納得できるほど、僕は小さい子供じゃない。
だけど、この人にとって僕は、3歳児のままなのかもしれない。
僕の母は、日本でも1、2を争う相沢財閥の末娘だった。
ゆくゆくは大臣の息子か、代議士に嫁がせるはずだったのを、どこの馬の骨かも分からない父との恋愛の末に、駆け落ちをした。
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