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そこに、高校入学当初から、僕は一人暮らしをしている。 最初は1週間に一度、訪問してきたお祖父様だけど、財閥の運営が忙しいせいか、徐々に足が遠ざかっていた。 そして、それに比例するように、プレゼント攻撃が始まったのだ。 最初は、日用品などだったのが、今はスーツや普段着などに変わった。 それらはいつも、金井さんによって運ばれてくる。 おかげで、たいして大きくもないクローゼットは、衣服で溢れ返っている。 「悠貴は、後継者だから可愛くて仕方がないんだろうけど、パパとしてはやっぱり悔しいなぁ~」 何に対しての対抗心なのかは、聞かなくても判る。 だけど二人共、僕が高校生だと本当に認識しているかどうか疑問だ。 こんな高級なスーツに、一流レストランでの食事。 普通の高校生活を送っていれば、まず体験する機会なんてなかっただろう。 それだけ僕を取り巻く環境は特殊だ。 イヤだと言ったところで、今更そんなのは通用しない。 お祖父様の屋敷で育った12年の間に、僕は帝王学や経済学、ありとあらゆる知識を叩き込まれた。 相沢財閥の全てを受け継ぐ、次期後継者として…。 「気を悪くさせてごめんね。ほら、食事にしよう。せっかくの料理なのに、冷めてしまったらもったいないよ」 目の前に置かれた皿からは、湯気とともにいい香りが漂ってくる。 空腹だった僕は、早速料理に手をつけた。
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