687人が本棚に入れています
本棚に追加
「ご馳走さまでした」
父の分のデザートまで貰った僕は、それを食べ終え、きちんと手を合わせて挨拶をする。
「そんなに小さい身体なのに、よく食べたね」
しみじみと呟く父を、僕はおもいっきり睨みつける。
確かに父の横に並べば、身長164㎝しかない僕は、小さいと思う。
だけど、口に出さないで欲しかった…。
母に似て一向に男らしくならない、この女顔や中学を卒業してから成長する気配のない身長。
それらは、僕にとってコンプレックスにしかならない。
「そんな顔しても、可愛いだけだよ」
全く効果なし…。
会計を済ませ、エレベーターに向かう。
電源を入れた父の携帯が、その瞬間を待っていたかのように鳴り出す。
僕に背を向け、部下らしき相手に指示を与える。
その話し方は、今までのように崩れたモノではない。
それどころか、かなり厳しい。
父が忙しいのは分かっているけど、割り切れない部分もある。
もっと色々話たい事もあったけど、半分も話せていない。
明日は土曜日だから、一緒に家に行ってって思ったけど、この様子だと無理だろうなぁ…。
「ごめんね」
謝罪の意味を問うまでもない。
「相変わらず忙しそうだね」
最初のコメントを投稿しよう!