「風の古道」

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「夜市」に収録された書き下し。 夏の午後から夕方にかけて読みたい物語です。   主人公の少年は、幼い春の日🌸花見中に迷子になり、誰もいない不思議な田舎道に迷いこむ。そこは、「古道」と呼ばれる異世界の道だった。 冒険心から、12歳の夏に親友カズキと再び古道に入りこんだ少年は、厳しい古道のルールを知る。すぐそこに見えていても、古道と外の世界は、好き勝手に行き来できない。外との通信手段はない。古道に属するものは、外へ持って出られない。神や妖怪が歩く世界。 家に帰れず、途方にくれる二人の面倒をみてくれたのは、古道の小さな茶店にいた旅人のレンだった。 翌朝、出口を目指して出発する三人の前に、コモリという人間の男が現れる。コモリがレンを狙って放った弾に撃たれ、衰弱して死んでしまうカズキ。 カズキを蘇生させるため、少年とレンは、水牛車(自動車はない)に死体を乗せ、秘儀を行う寺へと旅をする。 死霊に連れて行かれないよう、御符を貼ったカズキの死体は夏の空気の中、腐っていく。夜になると、死んだカズキは苦しそうに「はなして」とうめく。 旅の途中、レンの生い立ちが語られる。レンは古道で生まれた、古道に属する人間だった…   レンがいい💓長髪にジーンズ(これは彼の宝物だ)の、20歳位の青年。とんでもない運命を背負って、2度目の生を生きてる。   恒川光太郎の物語には、親しい人との突然の別れがよく出てくる。それが、無性に悲しい😢 少年は生きていたカズキと別れ、死んだカズキと別れ、レンは母と、次に育ててくれた男と別れ、レンが生まれる前に、母は外の世界で恋人を殺されている。   悲しくて、涙が出るどころじゃなく、泣きじゃくりながら読む😭   カズキが腐っていく様子は、悲しくもなぜか愛しい。   圧巻は、レンというキャラクターの位置。レンがどうして生まれ、どうして母と別れたのか。レンと母との、親子として以外の関係は。   簡単に説明すると、なんとも安っぽい設定に聞こえてしまうのでしませんが、読めば「はぁ~‼」と感嘆する事うけあい✨    しかしこの作者、大好きだけど書いたものがどうしてもかぶってる。   表現が豊かで、心を突いてくる文章なので、かぶっててもまぁいいんだけど😅   この先ずっとそういう訳にはいかんよね… といらぬ心配をしてしまう  かぶりっぷりはまた別の章で😃
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