第3話「弟」

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  ドアノブに手をかけると、思いのほか鍵はかかっていなかった。開けた瞬間、私は目の前の光景を疑った。     部屋には幸太の他に2人の男の子がおり、全員の手にはビニール袋が握られ、目がうつろになって脱力していた。 鼻をつく強烈な匂い、それはシンナーであった。 私は急いで窓を全開にし、空気を入れ替えた。   「あっ、あんたたち何してるの!?」     その問いにうつろな様子で、幸太がにやりと不気味に笑いながら言葉を返してきた。   「なんだよ姉ちゃん‥‥今は最高にハイな気分なんだ‥‥邪魔すんなよ」 「こいつ、おまえの姉貴? いちいちうるせぇやつだな」 「そう言うことだから、さっさと出て行けよ」     これが本当に幸太なのだろうか。 これが本当に私の弟なのだろうか。 1週間前に最後に会ったときからは似ても似つかない。 私はどうしていいかわからなくて、この現実が憎らしくて、彼らが持っていたタバコもシンナーもビニール袋も全て無理矢理取り上げた。   「何すんだよ!」     その言葉がさらに許せなくて、今まで出したこともない声で私は言った。   「いい加減にして! あんたたちはさっさと帰って! 二度と幸太に近寄らないで!」    
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