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ドアノブに手をかけると、思いのほか鍵はかかっていなかった。開けた瞬間、私は目の前の光景を疑った。
部屋には幸太の他に2人の男の子がおり、全員の手にはビニール袋が握られ、目がうつろになって脱力していた。
鼻をつく強烈な匂い、それはシンナーであった。
私は急いで窓を全開にし、空気を入れ替えた。
「あっ、あんたたち何してるの!?」
その問いにうつろな様子で、幸太がにやりと不気味に笑いながら言葉を返してきた。
「なんだよ姉ちゃん‥‥今は最高にハイな気分なんだ‥‥邪魔すんなよ」
「こいつ、おまえの姉貴? いちいちうるせぇやつだな」
「そう言うことだから、さっさと出て行けよ」
これが本当に幸太なのだろうか。
これが本当に私の弟なのだろうか。
1週間前に最後に会ったときからは似ても似つかない。
私はどうしていいかわからなくて、この現実が憎らしくて、彼らが持っていたタバコもシンナーもビニール袋も全て無理矢理取り上げた。
「何すんだよ!」
その言葉がさらに許せなくて、今まで出したこともない声で私は言った。
「いい加減にして! あんたたちはさっさと帰って! 二度と幸太に近寄らないで!」
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