その殺し屋の『仕事』第二章

6/13
前へ
/76ページ
次へ
道具は決まった。 あとは作業の手順だ。 これを決めるには、やはり天童の日々の行動を詳細に分析する必要がある。 だが、中々隙が見つからない。四六時中ボディガードが貼り付き、彼らの姿が無い時は決まって侵入困難な建物の中、容易に接近出来る環境下には無い。 こうなれば、強引に近付ける場面を作るしかない。 そう考えていた矢先、『マンネ』がネットから思わぬ情報を拾い上げてきた。 「何かの参考になりますか?」 そう言って差し出されたのは『マイニチ芸能』と言う三流雑誌のウェブ版の記事、蒼龍会元幹部のインタビューが掲載されている。 元々、AV女優のグラビアと暴力団関連の記事しか売りの無い雑誌だから、当然の中身だが、私はその内の一文に目が止まった。 『少年時代に亡くされた母上を、会長はしたっておられましてね、毎月のご命日には欠かさず墓参に行かれるんですよ、お墓の掃除や花の入れ替えも、みんなご自身でなされる』 すぐに『マンネ』に命じて天童の母親の命日を調べさせる。 三週間後だった。 この日こそが、天童を狙うチャンスだと私は考えた。 愛していた母親の命日に、ターゲットは冥府に招かれる。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

191人が本棚に入れています
本棚に追加