その殺し屋の『仕事』第二章

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天童の母が眠る霊園は。ハイソな階級の需要を当て込み、まるでどこかの宮殿にある豪華な庭園の様で、敷地内には、意匠の凝った物、シンプルな物、様々な墓が並んでいた。 『マンネ』と手分けして、天童家の墓を探すこと三十分、黒御影石のそれをようやく探し出す。 墓碑名には天童の母の名前と、朱の入った本人の名前、父親の名前は無い。 親としても、極道としても、あまり尊敬できない親父だった様だ。 整然とした墓の配置のおかげで、周囲の見晴らしは良く、守る側には有利な環境ではある。 つまり私には不都合な状況だと言う事だ。 遠距離からの狙撃も、接近しての襲撃も、早い時点で察知され反撃を食らうに違いない。 正攻法の殺しではまずしくじるだろう。 ならば自身はこの場に姿を現さず、罠を仕掛ける形が一番有効な手と言う事に成る。 では、何処に仕掛けるか?人目の無いのを確認してから周囲を歩く、 土の露出した地面は無く、何かを埋める事は不可能、辺りに立木も無いのでそれを利用し仕掛けるのも適わない。 もう一度、墓を見る。 『マンネ』が座りこんで、その細い指で供えられていた花を撫でていた。 「仏花の割りには、モダンな花が多いですね」
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