その殺し屋の『多忙』第三章

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立ち上がり、各人の生死を確かめる。菊池、若頭、そして背後に居たスキンヘッドには息は無い。 かろうじて腹を撃たれた者は呼吸をしているようだったが、それこそ虫の息である。 薄暗闇の中で、光を失いかけた双眸が床から私を睨む、その間に目掛け、一発撃ち込んだ。 砕けたデスクのほうから、うめき声が聞こえる。 近づくと、投げ飛ばされた組員が今しがた気絶から立ち直ったようだった。 初めに私にガンを飛ばしてきたあの彼だ。 私の姿を見つけ、あたりを見回すと頓狂な悲鳴を上げながら銃を探し始めた。 やっと、組長のタウスルを見つけると手を伸ばす、寸前の所で私はそれを蹴飛ばし、彼を見下ろした。 出合った時の威勢の良さはすでに失せ、恐怖に震える瞳で私を見上げる。 私は、そんな彼に言葉を掛けた。 「極道の道を選んだとき、こんな風に成るって覚悟はしなかったのか?」 答えは無かった。ただ、震えていた。 その彼に、残りの弾三発全てを叩き込んだ。 事務所を出て、近所のコインパーキングに向う。 停めてあったステージアのカーゴルームから、ガソリンを満タンに入れたポリタンクを二つ運び出し事務所に戻る。 まだ微かに硝煙が香る室内に念入りにガソリンを振りまく、特に死体にはだ。 この程度で人間の死体が灰にならないのは、職業柄良く知っている。しかし、闖入者の痕跡は幾分かは消えてくれるだろう。 満足行くまで部屋をガソリン塗れにすると、百円ライターを改造した自動発火装置を置いて事務所を出た。
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