その殺し屋の『多忙』第三章

6/6
前へ
/76ページ
次へ
またパーキングに戻り、着替えを始める。 硝煙と返り血とガソリン臭、コテコテに汚れた服を脱ぎ捨て、ビニール袋に収める。 次のジーンズとネルシャツに着替え終わる頃、背後でオレンジ色の閃光を感じた。ガソリンに引火したようだ。 振り返り、事務所を見ると、赤黒い炎が窓ガラスを突き破り、夜空を焦がすのが見えた。 近隣住民が野次馬と化し、消防車のけたたましいサイレンで巷があふれ出すと、私は車を出す。 幾台の緊急車両とすれ違い、少し静かな場所に出た頃、路肩に車を止め、携帯を取り出した。 三回のコールで『マンネ』が出る。私は勤めて静かに言った。 「多少ゴタゴタしたが、無事終わったよ、今から戻る」
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

191人が本棚に入れています
本棚に追加