その4

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『出すことのない手紙』 春の陽が淡いですね あなたは何を忘れますか? 何を求めますか? ワタシは思い出すのをやめて 求めるものを探しています 目をそらし続けるのですね ワタシも目をそらし続けています 何年もみてきたわけじゃないのに あなたが何を思うのかわかる気がします これから大切なものがたくさん増えるでしょう 大切なものは変わり続けるでしょう 変わっていくものがすべてあなたにつながることがないことを願います みんなあなたにひみつであることを願います 声がなつかしいですね ワタシの声もあなたにはなつかしいでしょう 心の奥に残っているのですね それがあなたを傷つける刃でないことを願っています 人は変わりゆくものだと知っているけれど それほど変われないものなのですね ワタシは毎日同じように起きて、同じように食事をしています それほど変われないものならば、いっそ静かに春の陽に心をまかせてみます 言葉はあなたに届けずに静かに春を迎えます 春の陽はこんなにも暖かいから、きっと静かにいられると思います
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