絶対的アイソレーション

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さて、内容的に特に気になることは他に見当たらないので、上手いな、と思った点について。 朝目覚めると、空くんの手のひらには『13』の数字がありました。 これが後々の展開にどう反映してくるのか今はまだ不明ではありますが、とある意味を持たせていることに上手さを感じます。 それは、原因は不明ながら翌日になったら『12』に変化していたこと。 このことから、一日過ぎると数字が減っていく、という思考が生まれます。 では、ゼロになったら何かが起きるのではないか、と思考が連なるのは当然です。 『0』というのは数字の始まりでありながら、終わりの数字でもあります。 すなわち、暗に死ぬまでの日数を表しているのではないか、と空も考えています。 世界のズレによって孤立したわけですが、それは死に至るような脅威ではなく、切迫した状況ではなかったはずでした。 ところが、そんな予告めいた数字が存在することで、それが本当に死ぬまでの日数を表しているわけではなくても、心のゆとりを奪って緊張感を演出しています。 孤立した程度では緊張感の足りなかった物語に時間的枷が設けられたことで、状況は逼迫(ひっぱく)したこととなります。 未来を示唆する一文はダメだと言いましたが、こういう形での予告こそが小説に面白味を生み出すということです。
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