妻のカラダが切り刻まれ魂までが消えていく

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妻にガンを告知しなければならない状況だが、その妻は子供が出来たことに大喜びで告げるのが忍びない。 他にも、子供よりも妻の命を優先させたいが、ガンにかかっていると知った妻は子供を優先させたいと願っている、という葛藤も生まれます。 ガンと子供が見事にリンクして主人公を悩ませている構図が、この小説の醍醐味になっています。 この部分だけ見ても、小説としての質はかなり高いです。 話作りの上手さ、ストーリー運びの上手さはシュウちんさんの武器と言えましょう。 前作「巧みな人生」では、心理描写や情景描写が足りない部分が多々見られましたが、今作では不足をまったく感じられませんでした。 むしろ、心理描写に至ってはエピソードの導入が的確で、痛いほどに主人公の気持ちが伝わってきます。 病に立ち向かって行く妻の姿、それを見守ることしか出来ない主人公、そしてようやく恵まれた小さな命の行く末。 まだまだ物語は始まったばかりですが、次々と立ち塞がる障害が激しい起伏となって読者心理を揺さぶります。 切ないストーリー展開でありながらユーモア溢れる文章運びで綴られているので、楽しめる部分もありました。 妻との出会いの回想シーンなどは、微笑ましくなるエピソードで二人の仲を応援したくもなります。 出来事一つ一つにそういった配慮がなされ、味気ない展開を排除していることもクオリティを高める要素になっていると言えます。
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