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歩いた所が人生だ
あるデパートの屋上に一人の男がいた
くたびれたスーツにダラッとしたネクタイをし、日曜日におこなわれるヒーローショーをベンチに座ってボォーッと眺めていた
デパートは全7階
流行ってる流行ってないで言えば流行ってわいない
ヒーローショー目当ての家族連れがちょこっと買い物をしていくぐらいだ
その男は、無言で缶コーヒー片手に死んだ魚のような目で、今日も舞台を眺めている
その姿から幽霊でわないかと客の間で噂されていた
男「あぁ…俺もあの怪人のようにスパッと死にたいなぁ…」
この男は以前、あの舞台に怪人として立っていた
ただ、演技力のなさ、声の小ささから、何より一向にヒーローになれないのに嫌気がさし、社長と喧嘩し、クビになっていたのだ
男「こっから飛びおりちゃおうか…そうすりゃショーもなくなる…」
ボソッとフェンスに目をやる
男「下の人巻き込んだら可哀相だな…」
またヒーローショーに目をやる
今日の怪人は電車怪人
ガタゴトガタゴトと叫んでいる
男「電車にひかれるってのもありか…ここから1番近いのは…地下鉄か」
財布の中を見る
男「はは…ホームに入れねぇよ…死ぬなって事か??…はは…」
ノソッと立ち上がる
ちょうどその時、ヒーローがやられかかっている
怪人「とどめだ~!覚悟しろ~」
ヒーロー「うう…ここまでか!」
司会「みんなぁ~!ヒーローに力をわけてあげてぇ~」
子供「がんばれ~」
「負けちゃやだぁ~」
「立てぇ~立てぇ~」
司会「みんなぁ~!せいので頑張れぇ~って言おう!いくよ!せいの!!」
子供「がんばれぇ!!」
男はその光景をうしろから見ていた
男「うぅっ…」
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