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━━━そんなわけで、
住み込みで働くということになったヤバいさんであるが、
部屋の用意など必要はないようで、総理さんが置いていった小型シェルターのようなもので寝起きするらしい。
不用意に眼帯が外れて邪眼が現れないように、だそうだ。
つぎに、ヤバいさんの主な職務は家事である。
それこそ、掃除に洗濯 料理に食器洗いまで、全部だ。
そして、
今、午後7時。絶好の夕飯タイムである。
ヤバいさんはひとり、台所にこもる。
料理をするときは流石に眼帯を外しますので、誤って見てしまったら……とのことだ。
ちなみに、邪眼は野菜や肉類等には効果がないらしく、安全だそーなので残さず食べるように。だそうだ。
しばらくして、台所からヤバいさんが出てきた。
羽のような手にシチューを一人分のせて、せっせと運んできたのだった。
一人分である。
「あの、ヤバいさん。
どうして、僕の分……だけなんです?
ヤバいさんも一緒に食べましょうよ。」
すると彼女は、
そんな、誤って眼帯が外れてしまったら。
なんて言った。
「いいよ。ヤバいさん。
どうせ見たって、僕は死なないんだし。
それに、一人で食べるより、二人で食べる方がおいしいでしょ」
彼女は少しの間とまどったが、直ぐに台所から自分用のシチューを持ってきて、
ちゃぶ台の、僕の向かい側にペタリと座った。
「はい、じゃあ。
いただきます。」
ヤバいさんも小さな声で、そう言った。
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