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無論、ヤバいさんは眼帯をしたままで。
「~~~~~~~!!!!」
酷く悶絶している。
それはそうだ、目隠しをしてろくすっぽに食べ物が見えないってのに、
その食べ物がアツいシチューなのだ。なんだかダチョウ倶楽部みたいだ、と思った。
「大丈夫?ヤバいさん。」
彼女はコクリコクリと頷いて答えるが、眼帯の下からはホロリと涙が出てきていた。
頬は赤く、口の中に食べ物をリスみたいに貯めたままで。
「……ヤバいさん、その……食べられるの?」
多少の熱なら感知できます、とヤバいさんは答えたが、
……この様子だと、シチューの温度は『多少』に含まれないと見える。
なので、しょうがなく僕は彼女のスプーンを持って、
「ホラ、僕が食べさせてあげるから。ね?」
突然、ヤバいさんは顔全体を真っ赤に張らせて、登頂部から煙を出し、暴発した。
ちょうど、ボンッ!と。
いや、いいです。じぶんで出来ます、とヤバいさんは言うのだが、
さっきの様子を見る限り、それは非常に難しいと判断できた。
「いーから、またやけどするかもしれないよ。」
そう言ってから
彼女はほんの少しだけ躊躇して、自分で口許を寄せてくれた。
「はい、じゃあ、あーん。」
やはり熱かったのか、少しの間だけ震えるようにしていたが、徐々に落ち着いてモチモチと食べ始めた。
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