出逢ってしまった2人

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  『すみません…  ぶつかっちゃって……』   アズサの右腕を支えていた男性が 頭を下げた。   『どうせアズサが  よそ見してたんでしょ?』   カオリがアズサの顔を覗き込む。   『滑り方が格好良くて  見惚れちゃってた』 アズサが言うと   『実は俺も……なんてね』   私達より少し年上に感じる その男性は アズサを気遣う様に笑った。   『ケガは?』   冗談が言えるくらいだから 大した事はなさそうだけれど 私はアズサとその男性に尋ねる。   『全然っ!!』   2人は声を揃えて言った。   『コーヒーでも飲まない?』   アズサは自分の体から離れた 男性に聞いた。   『友達がコテージで待ってるから  合流しない?』   その男性の言葉にアズサは   『うんっ』と   元気いっぱい頷いた。 アズサはこんな 些細な出逢いさえも 逃さない。 クラブ通いの今時のギャルだ。 カオリも乗り気でいる。   時々この2人がナゼ 私の友達なのかと 考えてしまう。     私はもっと滑っていたかった。   何より初対面の異性と 話をするのが苦手だ。   この軽いノリのタイプの男は 一番苦手だ。 アズサの左腕を支えていた男性も 少し躊躇っている様に見えた。   そして私に    『気が進まないかな?』   と言った。  私はその言葉に   『大丈夫です』と   全然大丈夫じゃないけれど 作り笑いをして答えた。     気が進まなかったのに 私は出逢ってしまうんだ。 動き出した貴方と私の 儚い運命。 私はその神様の敷いたレールに 逆らえなかった。
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