出逢ってしまった2人

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  ソウタに電話する事もなく 遅番の仕事を終わらせ サナエと呑みに出掛けた。     6人ほど座れるカウンターと 化粧室があるだけの1階。 2階は4人掛けのボックス席が 8個ありカラオケも出来る 作りになっているその店は 私達の行きつけの飲み屋だった。   私とサナエは カウンターに座って マスターにいつもの軽い挨拶をし お互いビールを注文した。   理由のない乾杯をした後 近況報告をしたり 取り留めもない話をした。   どこの会社にも 《お局様》や《嫌な上司》は 付き物で 愚痴を言い合った。   意識していないから 自分からソウタの話題も出ない。   サナエは高卒で就職し 2回目の夏を 迎えようとしていた。   『メィみたいに高校なんて  行かないで  就職すれば良かった』   とサナエは良く口にした。     私は高校に行かなかった分 社会に出るのが早かった。   けれど殆どの友人が進学し 私の中には 優越感と羨ましい気持ちが 入り混じっていた。     学園祭や体育祭。 修学旅行や卒業旅行。     私はと言えば 仕事に行って 帰って寝る。   週末になれば 友達と遊んだけれど 世界が違うと感じずには いられなかった。   そんな私と変わらずに 付き合ってくれたのが アズサ、カオリ、そしてサナエ。     見た目も性格も違う私達4人。   私の親友だ。   サナエと別れたのは 深夜2時を回っていた。     家に着いて携帯を開く。   【着信あり】     (あっ……忘れてた……)     そこで初めてソウタの事を 思い出す。       こんな私がソウタの事を 24時間 考える時が来るなんてね……。
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