人それぞれ

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「パパ 兄ちゃん居なくなっちゃった…」 え!? (優太! 兄ちゃん居るぞ! ほら居るぞ!) 優太の前で話し掛けたがもう見えてもないし聞こえてもなかった… 子供だから見える時と見えない時があるのか… 「優太…居なくなったって 兄ちゃんはもう居ないのか?」 親父が聞くと、またコクンとうなずいた 親父は俺が居る所は全然違う空間を見て 「久… 心配するな… 心配するなよ…」 母親も親父が見ている空の空間を見て 「久 また来なさい お願いだからまた……」 俺はただ立ち尽くし聞こえないのは承知で(ありがとう ありがとう)と優太に訴えた。 俺の居なくなった つまり見えなくなったこの部屋はまた静けさが訪れ 優太も疲れたのか雅子さんの胸の中で寝息をたてた 両親は眠れなかったようだがこうして夜は更け 俺のお通夜は終わった
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