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目の前で死んでいく生徒を見るのは、身を引き千切るように辛かった。
瞳から溢れてくる涙は止めどなく流れている。
何よりも怖い。
呼吸もままならず、さっきから胸に激痛が走っている。
「逃げなくちゃ、ここから。逃げなくちゃ」
行動を肯定するように、口から漏れる「逃げなくちゃ」という言葉。
目の前で、3人の人が死んだ。
それは、紛れもない事実だった。
ガランとした街中に一人、ふらふらと目的地の警察署へ向かう。
息も絶え絶えに電柱に寄り掛かると、ガラス窓に映る自分がいた。衣服は汚れ、朝、綺麗にしてきた化粧も崩れてしまっている。
警察署は安全。
今は、それを信じて進むことしかできない。
「土田先生!」
また誰かが私を呼ぶ。
「いい加減に……してよ」
休息を取る暇もない。
もはや自分も、死んだ彼らのようになってしまったほうが楽だろう。
走っても、走っても、また来る恐怖。
「もう……無理」
諦めたようにアスファルトに膝をつく。
「逃げないでください」
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