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「今、行ってきたんだ」
「行ってきた……それで?」
「誰もいなかった。というか、死体しかなかった……」
「嘘っ!」
警察署までは、もう少しだったのに。
目的地まで行けば安全だと思っていたのに。
取り乱し、走り出す。
高島さんが話したことが、真実であろうとなかろうと、この目で見なくては信じられない。
「待って! 行ったらだめだ!」
後ろで叫ぶ声が聞こえる。
高島さんが止めようとしているのだろうが、もう、前しか見えない。
あと、少し。
あと、少し。
外には誰もいなかった。
パトカーも、自転車も、バイクもいつものように止まっている。
違うのは、どんよりと暗い雰囲気。
そして、人がいない。
私は、追いかけられているように、ガラス張りのドアを開け、誰も入って来れないよう、そこにもたれかけた。
薄暗い。
それに、髪の毛が焦げたような臭い。
「すいません! すいません! 誰か居ませんか?」
必死に叫ぶ。
「土田先生! だめだ!」
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