3.『連鎖』

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       また、目の前で人が死んだ。  どうすることもできなかった。  というよりも、やっと見つけた『正常な人』を失ったことが、何より心細い。  僕も怖かったのだ。  土田先生を見つけた時、異常がないか物陰から様子を見ていた。  一人で歩いていた時も。  生徒らしき人が死んだ時も。  だが、今、後悔している暇はない。  辺りを見回し、脱出に使えそうな自転車があることに気付く。 「これで、逃げられる―――」  植え込みに置いてあった石を広いあげ、鍵を壊した。  さっきまで、徒歩で移動していたので、疲れ切った身体で脱出するには、調度良い。  サドルに跨がり、思い切りペダルをこぎだすと、思った通り疲れた身体でも十分の移動速度が得られた。  この調子でいけば、10分ほどで、村を抜けられるだろう。  あとは、誰にも会わないことを祈るだけ。 「早く、早く」  夢中になっていた。  一人の不安も吹き飛ばすように、軽快に走る自転車。  ペコン。  どこかで、またあの音がする。      
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