1.『始まり』

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      「よーし、始めるぞ」  試合開始のホイッスルとともに、ボールに群がる生徒達。  男子も女子も関係なくはしゃぐ姿は、とても初々しく、本来の学生の姿を表しているようだった。 「先生……」 「小宮、どうした。気持ち悪いのか?」  一人の女子生徒が、私の所へ走って来た。顔は青ざめていて、今にも倒れてしまいそうだ。 「誰かに、見られてる―――」 「大丈夫か!」  「誰かに、見られてる―――」そう言って、女子生徒は気を失ってしまった。ぐったりとしていて、『動かしたら危険』そう感じた。  それを見て、生徒達が私達の周りに群がる。 「誰か、他の先生を呼んで来てくれ!」 「はい!」  クラスで一番足の早い木塚が、校舎に向かって走って行く。 「お前達も、教室に戻って!」 「でも……先生」 「大丈夫。すぐに救急車を呼んで貰うから。安心して待ってなさい」  口から出た精一杯の言葉だった。 「わかりました。後で必ず報告して下さいね」  先頭で心配そうな顔をしていたクラス委員の前田が、他の生徒を連れて教室へと帰っていく。      
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