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「よーし、始めるぞ」
試合開始のホイッスルとともに、ボールに群がる生徒達。
男子も女子も関係なくはしゃぐ姿は、とても初々しく、本来の学生の姿を表しているようだった。
「先生……」
「小宮、どうした。気持ち悪いのか?」
一人の女子生徒が、私の所へ走って来た。顔は青ざめていて、今にも倒れてしまいそうだ。
「誰かに、見られてる―――」
「大丈夫か!」
「誰かに、見られてる―――」そう言って、女子生徒は気を失ってしまった。ぐったりとしていて、『動かしたら危険』そう感じた。
それを見て、生徒達が私達の周りに群がる。
「誰か、他の先生を呼んで来てくれ!」
「はい!」
クラスで一番足の早い木塚が、校舎に向かって走って行く。
「お前達も、教室に戻って!」
「でも……先生」
「大丈夫。すぐに救急車を呼んで貰うから。安心して待ってなさい」
口から出た精一杯の言葉だった。
「わかりました。後で必ず報告して下さいね」
先頭で心配そうな顔をしていたクラス委員の前田が、他の生徒を連れて教室へと帰っていく。
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