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「これは"桜"と呼ばれる花の木の幹です。私はこの花に関する民謡に興味を抱きました」
「さく……ら?」
トワは胸の奥がざわめくのを感じた。
うまく説明出来ないが、大事な何かを忘れているような……。
急に頭の後頭部を誰かに強く叩かれているような錯覚に陥る。
無意識に胸の鼓動も早っていく。
「トワ……。あなたはこの花を見てどう思いますか? いや、あなたはこの花を見て何かを感じますか?」
茜はそう言いトワの表情の少しの変化も見逃すまいと凝視する。
「何かを……?」
トワはとっさに目をつぶった。
何かを……感じるか?
分からない。
この感覚が何なのか。
説明するのも難しい。
しかし依然として胸の鼓動は止まらない。
「ごめん、茜。分からない。こんな花初めて見るし、確かに何か変な感じがするけどきっと私の気のせいだと思う」
「そうですか……」
トワがそう答えると茜は今まで見たこともないほど落ち込み、顔は今にも泣きそうになった。
「えっ!? あ……茜!? ほんとごめん、大丈夫?」
トワが茜の顔を見て慌てて尋ねる。
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