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トワはそのまま家には帰らず学校と街から少しはなれたところにある森へと向かった。
「はぁ……はぁ……。もう少し先か」
庭園を出る際にこっそりと摘んで来た花束を片手に持ち、トワは息を切らしながら周りを見回す。
森は木々が鬱蒼(ウッソウ)と生い茂っているせいか、まだ日が沈んでいないにも関わらず薄暗かった。
しかし、木々の間から暖かい木漏れ日が差し込み所々ほんのりと明るい。
さらに森の奥に進んで行くと、古びた黄色い屋根の小屋が見えてきた。
その小屋の裏の方にトワが目指すものがあるのだ。
「あった!」
トワはそれを見つけると上に積もった落ち葉をはらい落とす。
「今年も来たよ。お母さん」
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