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そこには手作りの作られた、丸いアーチをえがいて墓標が立つ質素な墓があった。
トワは片手に握りしめていた花束を墓の前にそっと置く。
「今日は放課後に茜と学校の裏にある庭園へ行ったんだ。その花はその時に摘んできた花だよ!きれいでしょ!」
トワは墓の前に座ると鞄を下ろし、語りかけるように呟いた。
「実はそこで、とても不思議なものを見たんだ。その庭園の一番奥にある花なんだけどね! ガラスケースに入ってて綺麗なピンク色をしてた。でも見てると不安になるような……少し変な感じがした。茜の様子も変だったし……」
思い出すようにトワは目をつむる。
優しく頬をなでる風が心地よい。
トワは肩までのばした漆黒(シッコク)の髪を風が通りぬけてゆくのを感じた。
しばらくして目を開けると微笑みながら墓に向かって話し続ける。
「お母さん。学校は……ほとんど毎日七時間授業で大変だけど授業は茜も一緒だし、心配ないよ! 見ての通り私はちゃんと元気だし。ここへ来る時も走ってきたくらいだから!」
トワはへへっと笑いながら言った。
「それに……」
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