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驚き慌てる魔女をよそに、目の前の少年は冷静に状況を分析していた。
「……つまりあんたは始めから、俺達を追い出すつもりだったんだな」
魔女の言葉を無視して、少年は魔女に尋ねた。
「そっ、そうだ! この森はお前達みたいな子供が、遊び半分で入っていい森じゃないからな!! それよりなんでお前は逃げない!?」
この森の暗さのせいでよく見えなかったが、魔女は慣れてきた目でようやく目の前にいる少年を凝視する。
いや、少年じゃない。
青年と呼んだ方が正しいだろう。
歳は15、6歳で多分魔女と同じ位だ。
透けるような真っ白な肌に漆黒の髪、魔女よりずっと背が高い。
魔女は思わずその精悍(セイカン)な面構えに一歩後ずさった。
「あんたはまだ俺達に何もしていない。危害も加えられていないのに、勝手に怖がって逃げるなんて失礼だろ?」
その青年は真顔のまま、魔女が脱ぎ取った老婆の皮を見つめていた。
「まあ……悪戯されたと思えば、多少は危害を加えられたことにはなるのか」
魔女は青年の言葉で、手に持っている老婆の皮に目をやると顔を真っ赤にした。
「これは! 子供を森から追い出すためで、悪戯なんかと一緒にするな!」
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