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青年は魔女をしばらく無言で怪訝(ケゲン)そうにみていたが、深くため息をつくと魔女を横切り森へと歩き出した。
「ちょ、ちょっと!!」
魔女は慌てて青年を呼び止めた。
さっきから無視されてばかりだ。
失礼にも程がある。
しかしその青年は、煩(ワズラ)わしそうに振りかえる。
「まだ何か? マダラン達も先に行ったまま心配だし。心配しなくても、街の人たちにあんたのこと言いふらしたりする気はない。あんたは危険な人物には見えないから。じゃあ」
そう言って青年はスタスタと、他の子供達が走って行った方に消えて行った。
なんだか、肩透かしを食らった気分だ。
残された魔女は、青年の背中と手に持っている老婆の皮を交互に複雑な顔で見つめていた。
「……なんだあいつ」
森がサワサワとざわめき、冷たい風が魔女の頬をかすめていった。
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