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「意味が分からない……どういうこと!?」
「この国には古くからの言い伝えがございます」
「言い伝え?」
トワは目だけは暁を見据えたまま、どうにか体を動かせないかともがく。
「はい。この国の桜が少女を召喚する時、国に再び新たな繁栄がもたらされる、と」
無表情のまま暁は言った。
「桜が人を召喚!?この国には桜があるの? 桜ってただの花でしょう。そんな力があるなんて……ありえない」
トワは暁の言葉に耳を疑った。
「桜はこの国を守る象徴。この国に何百年も昔から存在する一本の巨大な桜には、霊力が宿っていると言われています。その桜がこの国に少女をを喚ぶと、豊かな大地と平和な時代を保証すると、言い伝えられているのです。そして今……あなたが召喚された」
「……っ!?」
これは夢だろうか。
目の前の老女は、トワが桜に喚ばれたと言う。
ここはバルト国ではないと……。
あまりにも突飛な状況に、思考が追いつかない。
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