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「何かの間違えじゃないの? 私には国を平和にする力も豊かにする力もない。なんで私なのかわからない」
どんなに体を動かそうとしても動かすたびに激痛が走り、なかなか思うようにいかない。
「いえ、間違いではございません。桜が選んだのですから、私達はそれに従わねばなりません。言い伝えによると召喚された少女は后になり、力を発揮するそうです」
「后? つまり王様と結婚するってこと!?」
動くのを止め暁を食い入るように見つめる。
トワは手のひらに汗が滲むのを感じた。
「はい。なので早速今から、その儀式の準備をさせていただきます」
「ちょ、ちょっと! 儀式の準備って!?」
トワは思わず目を見開く。
口の中がからからに乾いて喋りにくい。
「当然、結婚式の準備です」
暁は無表情で淡々と、必要事項だけを語った。
トワは突然のことに焦り、声を荒げた。
「勝手に決めないでよ! 私はこんな得体の知れない国の王と結婚なんてしたくない!!」
王であり結婚できるというのだから、それなりの年齢ではあるのだろう。
もし仮に王がトワよりも年下か、あるいは少し年上ならまだいい。
だが一回りも二回りも年上で、最悪還暦近い老体だとしたら……。
トワは考えるだけでゾッとした。
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