結婚

14/20

288人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
暁がそう言うと、トワの腕をがっちりと掴んでいた潤と霞がまた、強い力で暁の前に無理やり立たせた。 暁はトワを上から下まで見た後、トワが暴れた時に乱れた衣装のズレをなおし、頭にたくさんのビーズがついた白のショールをトワにかぶせる。 見かけのわりに意外と重たい。 「ちょっと何これ!? 前が見えない!」 ショールを払い落とそうとするトワの両手を、暁は片手で押さえつける。 この国の召使いは皆どうしてこんなにも力が強いのだろう。 トワはそれでも必死にショールを取ろうと頭をふりまわした。 しかし、力任せに頭をふったせいか頭が痛み出したためトワはすぐに諦めた。 「見えなくてもいいんです。誓いの口づけがあるまでお互いの顔を見ないのが掟ですから」 暁はまだトワの両手をつかんだまま、もう片方の手で背中を軽く二回叩いた。 「待って! 口づけってどういうこと!?」 「結婚とはそういうものでしょう。足元は見えるはずです。入ったらそのまま、まっすぐに歩いてください」 そう暁がトワに言うと後ろにいた潤と霞が離れていったのを感じた。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

288人が本棚に入れています
本棚に追加