結婚

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こんなの嫌だ。冗談じゃない。 手のひらにじっとりと嫌な汗が広がる。 トワはただ自分の国に帰りたいだけだ。 こんな訳の分からないことになぜ巻き込まれなければいけないのか。 怒りよりむしろ悔しさがトワの心を支配する。 今の自分の状況を考えると、この場面でどうしようも出来ない無力さがあるだけだった。 どうしよう……。 このまま本当に結婚するしかないのだろうか。 得体の知れない国の得体の知れない王子と結婚など考えたくもない。 それならばいっそ……。 今までに感じたことのないほどの緊張感がトワを包む。 そして後ろで誰かが二回手を叩いたかと思うと大きな音を立てて扉の開く音がした。 『花嫁入場』 扉の中からよく通る声で誰かが叫んだのが聞こえた。 「もう後戻りは出来ません。トワ様、そのまままっすぐお進みください」 暁の声が聞こえたと思うと、掴まれていた手がふっと自由になったのを感じた。 暁の落ち着いた声がトワをよけいに緊張させる。 成功するかは分からない。 しかし覚悟は出来た。
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