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息をするのでさえ苦しくなる。
授業の発表の時でさえもこんなに緊張したことはない。
トワはショールの裾を汗がにじむ手でぎゅっと握りしめた。
こういうときに、自分がいかに小心者かということを実感する。
どんなに大声で偉そうなことを言えても、いざとなると緊張に押しつぶされそうで足すらまともに動かなくなるのだ。
とりあえず落ち着かなければ。
雰囲気にのまれて硬直しきった足は震えが止まらない。
すると、トワは衣装の裾を踏んで転びかけた。
危うく落ちそうになったショールを必死で元に戻して顔を隠した。
まわりからはまたトワを嘲笑う声が聞こえる。
顔が真っ赤になるのがわかった。
今すぐこの場から逃げ出したい。
思わず進む足が速くなる。
しかし気がつくと、いつの間にか王子と思われる足がショールの下から覗いていた。
どうやら向こうもトワと同じように白地に赤のビーズを施された衣装に身を包んでいるようだ。
これが王子?
この人と結婚……!?
考えただけで緊張が高まり鼓動が激しくなる。
今すぐ吐いてしまえたらどれだけ楽だろう。
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