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「いったい、何故お前はあれから私の家にしつこく入り浸るんだ!?」
ぐつぐつと鍋の中のものが音を立てて煮えている。
そんな中トキはソファに腰かけならが、部屋にあった新聞を読んでいた。
「なんだか……最近町では家畜や畑が荒らされる被害が増えているそうだ。まぁ、どうせ野犬かなんかだろうなぁ」
「お、お前っ!! 人の話を聞け!」
ソファで新聞を読んでいるトキに魔女は怒鳴った。
「毎日毎日、あんたも飽きないな。そろそろ俺の存在に慣れただろ?」
トキはそう言うと、いたずらっぽく笑った。
トキは魔女と会ったあの日からほぼ毎日この小屋に足を運んでいる。
初め魔女は決して小屋の中へトキを入れようとはしなかった。
しかし一度魔女の留守を見計(ミハカ)らい勝手に小屋へ入って以来、魔女は小屋の中へ入れてくれるようになったのだ。
魔女は空き巣狙いのような真似をされるくらいなら、初めから嫌々でも小屋へ入れてやるべきだったと後悔したようだ。
「慣れるか!! いい加減にくつろぐのをやめて帰れ! 私はお前と馴れ合う気はない!!」
「……じゃあ何故前のように俺が森に入った時点で追い出そうとしないんだ?」
怒り狂う魔女に怯(ヒル)むことなくトキは落ち着いて尋ねた。
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