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この魔女の小屋は見かけ程、中は広くない。
小屋は二階建てで階段や壁や床が白で統一されて、清潔感のある造りになっている。
一階はキッチンにソファ、大きな本棚が二つに丸型の机が置かれ、壁には先ほどの地図や鹿の首だけの剥製(ハクセイ)が飾られている。
ところどころに大小様々な黒い箱が置かれているが、見ただけでは何が入っているのか検討もつかない。
そしてトキがこの小屋に入って一番気になっているのは、本棚の下段に隠すように置かれているガラスケースだった。
トキはちらっと魔女を見ると、まだ不機嫌そうに眉を寄せていた。
今はまだ何を聞いても答えてはくれないだろう。
トキはそっと立ち上がり、手に持っていた新聞を机の上に置いた。
天井が低いため、歳のわりに背が高いトキはいつも頭が天井すれすれだ。
「ならなぜ毎日私の小屋に来るんだ?」
魔女は仏頂面のまま、鍋の火を切って言った。
「俺があんたに興味があるからだ」
魔女は一瞬トキを睨み何かを言おうとしたが、諦めて近くに置いてあったかごを手にとった。
「もういい。お前と話すと疲れる。私は町へ買い出しに行く。私が帰って来るまでに消えていろ」
「待て! 俺も行く」
「来なくていい! 私はさっきお前と馴れ合う気はないと言ったはずだ」
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