~黄~

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トキは森の中を魔女の手を引きながらスタスタと進んでいく。 「もう、分かった! 分かったからせめて手は離してくれ」 魔女はトキの手を放そうとまだ微力ながら抵抗している。 そんな魔女を振り返ることもなく、トキはゆっくりと森の中を歩いた。 「……この森ってあんたと歩くと案外明るいんだなぁ」 トキは魔女の話など聞いていないかのようにあたりを見渡して言った。 緩やかな風がトキと魔女の髪を撫でていく。 いつもトキが小屋へ行く時、森の中は暗くじめじめした雰囲気しかない。 ましてや風が吹くことさえまれだった。 「……。さっきからお前は本当に人の話を聞かないな」 魔女は呆れた様子でトキに言った。 するとトキは突然歩くのを止め魔女の方に振り向いた。 そしていたずらっぽく笑うと魔女の手をパッと放した。 「改めて自己紹介」 「はあ!?」 「俺の名はトキ」 「……聞いてない」 「あんたの名前は?」 「教える気はない」 魔女はトキを睨みつけはっきりと言った。
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