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相変わらず森は明るく居心地がいい。
時折頬を撫でていく風もトキに安心感を与えた。
あの調子だと魔女はまだトキに心を許すことはないだろう。
初めて家にいった頃よりかは、だいぶ話してくれるようになったし仏頂面でいることも減ったと思う。
さっき手を引いて歩いていた時も、それほど嫌がられている感じはしなかった。
むしろ魔女はトキを拒絶してるというより、何かと葛藤しているかのように見える。
これは単なる気のせいだろうか。
森を出るとまたトキは魔女を振り返る。
「そういえばあんた……あぁ!?」
しかし振り返るとそこには魔女の姿はなく、ただ爽やかな風になびいている木々達が並んでいるだけだった。
「逃げられた……」
トキはしばらく森を見つめていたが、諦めて橋を渡りはじめる。
その帰っていくトキの後ろ姿を魔女は木の影から見つめていた。
「あいつ、なんか嫌だ……」
そう言うと魔女は来た道を戻っていった。
来たときよりもほんのり明るい森の中を。
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