2つの眼球

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 都市内の様子は千年以上前に放置されたというのに、まるで時間が止まってしまったかのようにかつての面影を色濃く残していた。 建築物のほとんどが石造りであり、やはり劣化はしているが、今に至るもその姿を残している事を考えると、当時の建築技術の高度さが伺える。 石畳の隙間から草が生い茂っている事と、運ばれてきた木々の種が建物の屋根の上、脆くなった天井を突き破って根を張っている事を気にしなければ、ほとんど昔の街並みと変わらないだろう。 これほどまでに発展した都市が何故滅んだのか?ここで暮らしていた人々はどこへ消えたのか?様々な疑問に興味は底を突かない。 だがいつまでも観光気分では要られない、ここが自然に飲まれた都市であれば、人間に変わって必ず新たな主が現れる。 どこかに潜んでいるはずのモンスターに警戒しながら街の中心にある城へ向かっていると、風に運ばれて城の方から嫌に嗅ぎ馴れた香りがした。 血と人の焦げた独特の臭いだ。 6度に渡って送り込まれたハンター達が誰一人戻らなかった事を考えれば結果は想像に容易い。 そして遠くに佇む城へ目を向ける。 到着した時刻は間違いなく昼間なのだが、城の背景として浮かぶ空はやけに雲の流れが速く、その色は暗黒に、暗紫に、そして血を連想させる暗赤に染まっていた。 まさに世も末という言葉がしっくりくる。 奴は間違いなくそこにいるのだろう、本能と黒龍を祀る神器とされた黒龍剣がそれを告げた気がした。 「三度目の対面と行こうか…」 二度も殺されかけたというのにこれから再び奴と戦う事に恐怖はなかった。 このドラゴンSと黒龍剣は使用者を蝕むというが、既に俺も蝕まれたのだろうか。 だがそんな事も気にならない。 今は体の底から沸き上がる歓喜と憤怒が俺をシュレイド城へと突き動かしていた。
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