2つの眼球

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 黒翼の爪を紙一重で避け、伸ばした腕にカウンターで回転切りを見舞う。 相変わらずの手応えだが、行動パターンさえ把握できれば相手の迎撃にカウンターする余裕も生まれる。 一度に攻撃する手数は次第に増え、多少の隙を見つければジャンプ切りから回転切りまでの型を叩き込んだ。 だが、それでも黒翼の体力が膨大である事に違いはなかった。 攻撃を受けつつもまるで怯む様子はなく、爪や脚、尻尾による迎撃を硬くなに続けている。 「ちっ……」 振るわれた爪が肩の表明を撫でる感触が伝わり、悪寒が走る。 なんとか攻撃を食らわせてはいるが、こちらの体力は無尽蔵ではない。 振るわれた爪を避ければ精神力を大幅に削がれ、剣を振るうのにも体力を使う。 喉を潤し疲労を軽減させる回復薬も既に半分しかない。 時間を気にするほどの余裕はなく、ひたすら戦ってきたが、気が付けばあの赤黒かった空は黒一色に染まりつつあった。 完全に日が沈めば視界を確保する事さえ難しい。 「早く決める必要があるな…」 その焦りから隙が生じたのだろう、黒翼の振り回した尾に巻き込まれてしまった。 「ちぃ……」 吹き飛ばされた衝撃を受け身で逃がすが、黒翼の追撃は始まっていた。 唸りをあげ四肢を動かし、その質量と勢いをもって潰し殺そうと、黒翼は大地を這った。 二足歩行の人間が四足歩行の生物に速度で勝てるはずもなく、開かれた大顎がすぐ近くまで迫っていた。 「食われてたまるかよ…」 迫る黒翼の様子を確認しようと後ろを向くと、あるものが目に入った。 黒翼の背中に刃の半ばまで突き刺さった刀。 鈴の天下無双刀だった。 背後に周ると長い尻尾に巻き込まれる為に近寄る事はなかったが、まさかあんなものがあるとは思いもしなかった。 「無茶しやがって…」 握った拳に力が入る。 彼女の為にも必ず倒さなくてはならない。 その為にも俺は必死に逃げた。 その最中、コロシアムの壁に梯子が掛けられいるのが目に入った。 「あそこなら…」 走るルートを外壁側に変更し、梯子を目指し全力で大地を蹴る。 逃しはしないと黒翼の歩みがより速くなるのが背中越しに伝わった。 「間に合え…!」 俺は梯子へと飛び込むように、その身を投げた。
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