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開いていた手の平に伝わる感触。
その感触を逃すまいと、俺は必死でそれを掴んだ。
掴んだ実感を噛み締める事なく、そのまま猛然と梯子を登りだした。
直後足の裏に伝わる振動。
ちらりと下を見ると黒翼の顎が城壁ごと梯子を噛み砕いていた。
「馬鹿野郎が!危ねぇじゃねぇか!」
自棄気味にそう叫びながら梯子を無事に登り切った。
少しでも遅れていたらと考えると肝が冷えた。
だが依然として安心できる状況ではない、奴が二本足で立ち上がればこの城壁の上も攻撃範囲内だ。
辺りの状況を確認する。
円形のコロシアムを二つ繋げるその中間地点の城壁に古びた扉がある事に気付いた。
黒翼は喰い潰した城壁にまだ俺が居ると思っているのか、まだ顔をあげない。
「馬鹿め…」
侮辱の言葉を囁き、俺はその扉へ逃げ込んだ。
バタリと扉を閉めた瞬間に疲労は襲ってきた。
その場で座り込むとアイテムポーチから回復薬を取り出し喉に流し込んだ。
部屋の状況に気付くのは一息吐いてからであった。
「ここは…武器庫か」
小さな窓から洩れた光が暗い室内に最低限の灯りを与えていた。
室内には通常サイズの槍やハンターの使うボウガン、バリスタの弾や大砲の弾、そして大タル爆弾などモンスター戦にも対応できるものが置かれていた。
恐らく先に到着したハンターがここを仮のベースキャンプとしていたのだろう、簡素な作りのベッドが部屋の片隅に置かれていた。
「これだけあれば何か出来るな…」
視線の先には空の大タルが置かれていた。
「探してくれたかね?」
武器庫の扉を開け、黒翼に向けて叫ぶ。
コロシアム内を探し回っていた黒翼は俺の姿を確認すると猛然とその身を走らせた。
「どうした、俺を食ってみろ」
扉を開けたまま武器庫の中へと退避する。
誘われた黒翼は扉を城壁ごと破壊して室内に顔を入れた。
だがそれが狙いであった。
「馬鹿め…」
室内には元よりあった大タル爆弾、空の大タルに使えそうなあらゆる火薬類とボウガン用の散弾を敷き詰めた急造の大タル爆弾、総数十二個が部屋いっぱいに置かれていた。
「…あばよ」
そう言って反対のドアから俺は退避する。
置き土産に小タル爆弾を置いて。
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