2つの眼球

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 扉を閉めると直ぐにその脇へ移動し、両手で後頭部を守りつつ身を伏せた。 直後、ラオシャンロン戦以来となる大タル爆弾が爆発する景気のいい音が鼓膜を揺らした。 顔を上げると、ぱらぱらと消し炭になった大タル爆弾の木片が宙を舞っている。 武器庫に目をやると、その天井は爆発で突き破られ、中から黒煙が上がっていた。 退避した側の扉を見ると、爆風の通り道にあった地面にはくっきりと高熱の跡を残していた。 武器庫の煉瓦が崩れなかったのは幸運だろう。 だがその幸運を噛み締める余裕はない。 「具合はどうだ?え」 がらがらと音を起てて崩れ落ちる煉瓦。 その下から黒翼が顔を出した。 あれほどの爆発を間近で受けたというのに、その姿はほぼ無傷であった。 だがその瞳には怒りが宿っていた。 「小賢しい人間め、よくもやってくれたな…ってか」 ここにきてようやく黒翼は俺に敵意を向ける。 その殺意は先ほどまでのそれとは比べものにならなかった。 咆哮を轟かせ、黒翼はその黒い翼を広げ、羽ばたきを始める。 「飛ぶつもりか…」 羽ばたき空高く飛翔した黒翼は殺意溢れた双眼を俺へと向けた。 瞳に映った殺意を宿した光が喉の奥で煌めく。 「ちぃ…!」 急いでその場を飛び退く。 放たれたブレスは煉瓦作りの通路にぶつかり、その火力をもって粉々に焼き潰した。 だが黒翼は追撃の手を緩めず、そのまま連続でブレスを放った。 上空からの攻撃になすすべはなく、俺はひたすらに逃げる事しかできなかった。 上空から襲いくる高熱は、三度目を外した時点で終わりを告げた。 「こっからが本気ってか…?」 洩らした声には焦りの色が浮かぶ。 奴の攻撃性の変化を目の当たりにし、先ほどまでの行動パターンは通用しないと判断した。 悠然たる姿で大地へ降下する姿に、俺は降臨という言葉を連想した。
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